浄化槽の位置は注意しよう

全国の下水道普及率は、平成12年度現在で60%程度しかありません。96%も普及している東京の方は驚かれるでしょうが、地方によってはまだまだ20%や8%といった県もあるのが現状です。(国土交通省発表、平成11年度末の全国下水道整備状況より)

私は家相鑑定の際、地方からお越しの場合、浄化槽の位置を詳しく聞くようにしています。理由は一つ、浄化槽は問題を起こすときがあるからです。断っておきますが、決して浄化槽自体が悪いのではありません。施主や設計者が設置場所を誤ってしまうと浄化槽が問題を起こすのです。

私がなぜ浄化槽の位置を気にするかというと、それには大きな理由があるのです。皆さんもご存知の「腸管出血性大腸菌O‐157」、おそらくカイワレ大根が疑われた時を頭に浮かべると思いますが、実は日本で最初のO‐157の発生原因は幼稚園の浄化槽なのです。幼稚園児2名の幼い命を奪い、残された家族の運命をも変えてしまいました。建築業者や幼稚園の園長が浄化槽を過信し、井戸と浄化槽を隣接させたことがそもそもの間違いでした。浄化槽が割れた際に汚水が井戸に混入し、その井戸の水を飲んだ園児たち319人が、O‐157による下痢症に感染してしまったのです。

家づくりの際に浄化槽の位置を気にする人はあまりいません。私に鑑定を依頼される方たちも、私が上記のようなお話をするまでは、浄化槽のことなど気にも留めていなかったと言われます。もちろん浄化槽自体は、性能も安全性も充分考慮されています。しかし、この世の中「絶対」という言葉はないのです。

地球上には様々な生物がいるのです。驚かれるでしょうが、クラドスポリウム・レジネというカビの一種は、アルミなどの金属にも穴を開けてしまいます。デスルフォビブリオという微生物はガス管などの金属を、また硫黄酸化細菌という硫黄分の多い汚水に存在する菌は、何とコンクリートをも簡単に腐食させてしまうのです。「配管や設備が割れることはまずないだろう」とか、「ちゃんと壁で仕切っているから」という過信は大凶です。浄化槽を設置する時は、もし井戸があれば井戸から離すことが何より大切です。その際、隣家の井戸の位置にも気を配ることを忘れないでください。

もうひとつ、浄化槽には「臭い」というデメリットがあります。特に湿度が高い時期は臭いが気になります。台所・食堂の近くはもちろんですが、玄関の近くや駐車場の中に設置することも私は大凶としています。朝食時や朝の出発時、臭いで不快な気分になっては一日のスタートが台無しです。毎日のことだけに運勢にも影響しかねません。

インターネットのおかげで、全国からおみえになる設計図面を拝見しています。その中に「浄化槽」の3文字を見ると私は思います。日本は狭いようで、まだまだ広い国であると。




【浄化槽】
終末に下水処理場を持たない地域で、糞尿などを沈澱分離・無機物化し、有毒菌を殺して放流、もしくは吸い込ませる槽。
国語大辞典(新装版)小学館

【腸管出血性大腸菌O‐157】
1982年にアメリカのオレゴン州、ミシガン州でハンバーガーが原因食と推定される食中毒事件が発生し、血便などの症状から出血性大腸炎と名付けられ、これの原因が病原大腸菌O−157であるということが判明する。米国、カナダ、ヨーロッパなどでこれによる集団食中毒が報告され、日本では1990年(平成2年)に埼玉県浦和市の幼稚園で汚染された井戸水が原因となって死者2人を含む319人に及ぶ集団発生が報告された。




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