妻に殺される  (続編)

私のガイド記事、小池康壽の現代家相学「妻に殺される」、読んでいただけましたでしょうか? あの記事を読んで、早速、食器洗い機を購入された読者の方もいらしたでしょう。あれから1年。今年も梅雨どきを迎え、食中毒に注意が必要な時季となりました。

そこで今回は、「妻に殺される・続編」と題し、現代家相学から見た“食中毒を予防する家づくり”について、よりパワーアップしてお送りしたいと思います。


以前もお話しましたが、多くの方は、家庭で食中毒なんか起きないと思っています。しかし、厚生労働省の統計でもわかるように、発生件数の内14%近くが、家庭で起きているのです。しかしこれらは、感染源などの原因が特定できた数字であって、実際にはもっと多くの食中毒が、家庭で起きていると考えられます。飲食店や施設などで起きた場合は、多くの人に同時に症状が現れるため、それが食中毒と判別できますが、一般家庭で起きた場合は、単なる体調不良と思ってしまうケースも多いからです。

家相の古書には、「厨(くりや)は未申(ひつじさる)に構えるは、大いに凶し」という一節があります。厨とは台所のこと、未申とは南西の方角のことです。つまり、「南西に台所があるのは大凶である」という意味です。日本では、台風や季節風などの強い風が南西方向から吹く地域が多く、台所が南西にあると、万一台所のかまどの火から出火した場合、家が全燃しやすかったことが、南西の台所が嫌われた理由のひとつでした。しかし、薪でかまどの火を焚くことがなくなった現代では、もうひとつの理由こそ、家づくりに取り入れるべき“理にかなった”理由なのです。

それは、南西の「暑さ」です。南西は家の中で一番暑い場所で、特にこれからの季節は、西日の影響で室温がグングン上昇します。台所の室温が高くなれば、食材なども傷みやすくなりますし、カビや食中毒の原因となる菌も繁殖しやすくなります。ましてや、湿度の高い梅雨どきであればなおさらです。


ここで、食中毒の原因となる菌について、牛乳を例にお話しましょう。牛乳の殺菌方法は、その温度と時間により「超高温殺菌」・「高温殺菌」・「低温殺菌」の3種類に大別されます。現在市販されている牛乳の多くは「超高温殺菌」で、130度・2秒間の殺菌方法が利用されています。「高温殺菌」の場合は、72〜85度で15秒間以上の殺菌、そして、最も低い温度の62〜65度で連続的に30分の時間をかけて殺菌するのが「低温殺菌」です。実は多くの菌は、60度以上ではじめて安定的に死滅させることができるのです。

つまり、それ以下の温度では、菌は死滅しないといっても過言ではないのです。40度や50度の温度領域では、死滅どころか逆に繁殖を早めてしまうケースも多いといいます。南西の台所が暑くなるといっても、室温が60度を超える可能性は少ないですから、ほとんどの菌は繁殖してしまうと考えたほうがよいでしょう。


また、主婦の労働環境からも、食中毒を起こしやすくなるのです。皆さんもそうだと思いますが、暑い夏は、ざるそばや冷麦など、さっぱりした物が食べたくなりますね。調理をする主婦の立場としても、天ぷらや煮込み料理といった加熱時間の多い調理は、できればしたくないというのが正直な気持ちでしょう。部屋自体が暑い南西の台所の場合は、なおさら加熱料理を嫌う環境になってしまいがちです。このように、南西の台所はその暑さゆえ、食中毒に注意が必要なのです。

しかし、南西の台所がすべて大凶であるわけではありません。西側に窓がない場合、また、窓はあっても隣家の建物などの陰となり、西日の影響をそれほど受けずに済むこともあります。ですから、現代では「厨を日が当たる暑い場所に構えるは、大いに凶し」と考えていただければよいのです。

「現代では冷蔵庫やエアコンもあるじゃない」と思われるかもしれませんね。しかし、いくら文明の利器とはいえ、これらを過信することにも勘違いがあるのです。冷蔵庫では食中毒菌は死滅しません。あくまでも繁殖のスピードを弱めてくれるだけと理解してほしいのです。日の当たる暑い台所は室温が高いので、冷蔵庫のドアを開けるたびに熱い空気が庫内に入り、保冷状況や電気代にも少なからず影響してしまいます。

また、すべての食材を冷蔵庫で保存するわけではなく、たとえばジャガイモのように、常温で保存することが多いものの、日光が当たると「ソラニン」という有毒物質が増えてしまい、食中毒を起こしやすくなる食材もあるのです。エアコンに関しても、調理中に熱交換型の台所換気扇を使用しない限り、冷やされた空気は換気扇から排出してしまいますから、台所を快適な室温に保つことは難しいのです。またエアコンのフィルターやフィン内部にも、調理の際の油煙を含んだ空気が入り、他の部屋のエアコンよりもカビの発生が高まることも考えられます。



暑い場所にある台所が大凶であることは、十分おわかりいただけたと思います。しかし、これで終わってしまっては、“小池流現代家相学”とはいえません。なぜなら、家相は対策できるもの。いつものように対策法をお話したいと思うのですが、これから新築の予定、また間取りを検討中の場合は、南西のような暑い場所に台所をつくるのは避けることです。これが、まず一番目の対策法です。

私のところには、毎日のように鑑定の図面が送られてきますが、私の鑑定のスタンスは、図面の変更が容易である場合以外は極力変更を行わないようにし、住宅設備やインテリア、生活習慣でのアドバイスを心がけるようにしています。しかし、台所が南西にあり、西日による暑さの影響を大きく受けてしまうようなケースだけは、図面の変更を薦めています。昔も今も、食中毒は家相学上怖いものだからです。しかし、もうすでに南西に台所がある場合、南西でないにしても暑い場所に台所がある場合の対策法を、順にお話いたしましょう。


設備面の対策では、まず、昨年の記事でもお薦めした食器洗い機が有効です。人間の手では洗うことができない高温(70度前後)のお湯で洗ってくれるため、食器や調理器具に付いた菌のほとんどは死滅します。わが家の食器洗い機は2代目になりますが、最初に購入する際、妻は反対しました。「食器ぐらい自分で洗う」とか、「電気代や水道代がもったいない」とか言っていましたが、“後片づけが楽”というおまけも付いて、今では満足しているようです。

室温上昇のもとである西日を防ぐには、戸建住宅の場合はテラスを付けることをお薦めします。テラスを取り付けることで日差しは入りにくくなりますから、そのぶん室温は上昇しにくくなります。冬になれば太陽の高度が下がりますから、テラスを付けても光は入ります。夏の暑い時期の日差しだけを、効率よくカットしてくれるのです。最近では、台風でも破壊されにくい強度のある屋根材も開発され、メンテナンスの点でもずいぶん改良されました。

窓の外に樹木を植えることも、日除けの効果はありますが、台所ですので虫が付きやすい樹木を選ぶと弊害もありますし、建物に近づけて植えてしまうと、給水配管や排水配管、ガス配管などを根で傷めてしまうこともありますから注意が必要です。マンションなどの場合は、よしずやすだれ、外部に取り付けることができる遮光ブラインドなどで、暑い夏の時期だけでも遮光しましょう。日除けの対策を行う場合は、台所の照明を十分な明るさのあるものにしておくことも大切です。自然光が入らなくなったぶん手元が暗くなり、食品の鮮度を見誤ったり、調理中に怪我をしたりしてはいけませんからね。

最後に、南西など暑い場所に台所がある家も、そうでない家も、とにかくこれからの時期は、台所の衛生面に気を付けましょう。食材の管理はもとより、台所の掃除も常に心がけたいものです。もちろん、こまめな手洗いも忘れずに、家族の健康を維持していきましょう!

【厨】くりや
〔食膳(ゼン)を供する意の雅語の動詞「くる」の連用形+屋〕
「台所」の意の雅語的表現。
三省堂 新明解国語辞典 第五版 (C) より 引用紹介


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