天は寝室の上に寝室を造らず

私のもとには、毎日全国から家相鑑定の方が訪れます。その多くは設計段階のものですが、2世帯住宅の図面も多く見られます。インターネットをご覧になられて私に鑑定を依頼される方たちは、概ね30代から50代の方々。特に2世帯住宅の場合、親御さんが家相を気になさるということで、若い方からの依頼も多いのです。
また、既に2世帯住宅を建て入居している方からも、「2世帯で同居するようになってから、どうも家庭内がうまくいかない」とか、「せっかく建てた2世帯住宅なのに、家に帰っても休まるどころか疲れてしまう」など、その原因は家相にあるのではないかと心配される相談もよく寄せられます。本来、家は家族が仲良く暮らしていく場所、また、社会での疲れを癒す場所でありますが、2つの世帯がともに暮らすことで生まれてしまうトラブルやストレスも多いのです。そして、その原因が“家”にあるケースも少なくありません。

そのトラブルやストレスの元となる要素は、さまざま見つけることができますが、その中のひとつに上下階で寝室が重なるケースがあります。2世帯住宅では、多くの場合、下の階に親世帯、上の階に子世帯が住むことが多いのですが、その場合どうしても音の問題が浮上してくるのです。これは一昔前より現代のほうが、より深刻になってきています。

昔の家は、寝室といえば畳やカーペットが主体でした。しかし、ここ最近はフローリングがほとんどですから、生活音も階下に大きく伝わってしまうのです。階下への気づかいがなければ、親御さんの安眠を妨げたり、ストレスを感じさせたりしてしまうでしょうし、逆に気をつかうあまり、若夫婦にストレスがたまってしまうおそれもあります。これが若夫婦の結婚を機に同居する住宅であれば、少々大げさな言い方かもしれませんが、子孫繁栄にも影響してくることでしょう。

「寝室の上に寝室があるは大凶なり」。今回のタイトルの意味、実はこういうことなのです。実際に、私から指摘を受けるまで、上下階で寝室が重なることの弊害に気づいていない方が多いのです。上下階といえども、部屋の構成には注意をしなければいけません。私はいつもこのような場合、次のようにアドバイスをしています。

まず、まだ設計段階で図面の変更ができる場合。この場合は極力変更することです。できる限り、夫婦の部屋と親御さんの部屋は上下で重ならないようにすることが大切です。上の階がまだ子供室であれば、そこはかわいい孫のこと、多少うるさくても許してもらえますし、子供は就寝時間も早いため、問題が起きない場合も多いでしょう。しかしこれも、たとえば受験期を迎えた子供さんの部屋の場合は、深夜の物音に配慮が必要です。

また、もうひとつの方法として、以前の記事「魔法のじゅうたん」でお話したように、エレベーターを設置して、親世帯の部屋と子世帯の部屋を入れ替えてしまう手もあります。階下に子世帯が住むことは防犯上もよいことですし。

しかし、現実問題として、これらのアドバイスができる場合はまだよいほうです。敷地の条件によっては難しい場合もありますし、工程的に変更ができない場合もあります。そんなときは床材で対策をしましょう。フローリングをやめ、コルクやカーペットなどの衝撃を緩和する材料を選ぶこと。どうしてもフローリングを選ぶ場合は、防音効果の高いものを選ぶようにしましょう。もっとさかのぼっていえば、住宅メーカーを選ぶときも、階下への振動や音の対策がきちんと図られているメーカーを選ぶことも大切です。

昨今ではこれらの問題を考慮して、2階の構造材や床下地材に防音効果の高いものを採用するところが増えてきました。その一方で、天井高を高くとることばかりに気をつかい、2階の床と1階の天井の間の空間が異常に狭く、より音が響いてしまうような工法のメーカーも存在します。また入居後であれば、思い切って部屋を移すか、じゅうたんやカーペットなどを敷いて対策しましょう。そして、お互いの生活に配慮する気持ちも忘れないようにしたいものです。

福沢諭吉先生の『学問のすすめ』の中で「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」という有名な言葉がありますが、現代では住まいも然り。

「寝室の上に寝室を造らず、寝室の下に寝室を造らず」が、円満な2世帯同居、ストレス回避のための 小池康壽の『現代家相学のすすめ』です。



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