家相の正体  生活の知恵編

今までお話した、家相の4つの顔は

1:駄洒落や語呂合わせ
   (現代では取り入れる必要はない)
2:陰陽五行説からみた方位と設備の相性
   (現代では取り入れる必要はない)
3:鬼門(北東方向、南西方向)を異常に恐れる考え
   (史実から生まれたもので現代では怖いものではない)

4:先人の経験から積み重なる生活の知恵
(健康で安全に暮らす事を願うもの、現代こそ家づくりに必要な考え)


前回までは、「駄洒落や語呂合わせ」、「陰陽五行から見た占い的な考え方」、「鬼門を異常に恐れる考え」の3つの顔についてお話してきました。そしてこれらは、現代の家づくりには取り入れる必要のないものであることも、おわかりいただけたと思います。もし、家相というものが、これらの事柄のみで構成されているものだったら、私は家相の研究家になるどころか、家相を全面否定していたに違いありません。私が家相というものに惹かれた理由のひとつには、家相には上記4に挙げたもうひとつの顔、「先人の経験から積み重なる生活の知恵」があったからなのです。

この“生活の知恵”は、占い的な考えや、鬼門を恐れる考えばかりが前面に出ている家相の、隠れたキャラクターであります。しかし、この隠れたキャラクターこそが、迷信でも単なる言い伝えでもない理にかなう部分、つまり、家づくりのアイテムとなる本来の家相の姿であり、現代の家づくりにも必要なものなのです。

では、先人の経験から積み重なる生活の知恵とは、いったいどんなものなのでしょうか。私が所有する家相の古書には、このような記述が見られます。

「家の床は一尺4,5寸ぐらいを吉とするなり」。

一尺4,5寸とは、今の単位で言えば約45cm。これは、家の床の高さは、地面から45cmぐらいが吉なのだという意味です。日本の気候は湿度が高く、人間が生活する床面が地面と離れていないと、床板や畳が腐食しやすいこと、また建物だけでなく、湿度が人間の健康に悪影響を及ぼすことを、先人たちは自身の経験から言い伝えていたのです。

日本の住宅の寿命は、総務省の調査では約30年です。アメリカやイギリスの住宅の寿命は100年以上といわれ、日本とはまさに桁違いなのです。ヒノキや杉といった高級材を利用しながら、日本の家がこれだけ短い寿命である背景には、湿度の高さと雨季がある四季が影響しているのです。だから、家に関するこのような知恵(家相)が育てられたのではないでしょうか。建物を長持ちさせることが、ひいては人間も健康的に暮らせることなのだと、先人たちは知っていたのです。

ところで、先述の床高「45cm」という数字、みなさん驚かれるかもしれませんが、実はこれ、現在の建築基準法(施工令法22条)でいう床高に該当する数字でもあるのです。家相の考え方には、現行の建築基準法の基礎になっていると思われる事柄も多いのです。

南が吉で北が凶という考え方も、太陽の光が人間や家にとって、必要不可欠なものであるからです。建築基準法にも「採光」というルールがあり、家の中に一定量の光を取り入れることが決められています。この採光のルールをクリアできない部屋は、居室としての利用を制限されているのです。

*建築基準法も*家相学も、どちらも制限や締めつけに思われがちで、家づくりには時として邪魔者でもあります。しかし、建物の耐久性や安全性、そこに住む人間の健康を願うものとして、家づくりには必要なものなのです。もっとも、家を建てる場合には、建築基準法に則った家づくりは、メーカーや工務店サイドで進めてくれます。大切なのは「理に適う家相の考え方」をどう取り入れるかということ。

「家相が気になる」、「家づくりに家相を取り入れたい」と思われたときは、家相の4つの顔を思い浮かべてください。みなさんの家づくりに必要な家相、そうでない家相、対策さえすれば問題ない家相の顔が、見えてくることと思います。




*建築基準法の第一章 総則(目的)の第一条
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。
*【家相】
吉凶に関係があるとされる、家の方向、位置、構造など。また、家の様子からその吉凶を判断すること。中国から伝わった陰陽五行説に基づく考え方。
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