家づくりに必要なのか、不要なのか。信じてよいものか、単なる迷信か…。今ひとつ実体の見えない家相には“4つの顔”があると、私はいつもお話しています。1つめは、前々回お話した「駄洒落や語呂合わせ」的な考え方。2つめは、前回お話した「陰陽五行説から見た方位と部屋の相性」による考え方です。そして今回は、3つめの「鬼門を異常に恐れる」考え方について、お話を続けたいと思います。家相といえばすぐ思い浮かぶのが「鬼門」ですよね。鬼門は、災いを呼ぶ方角や場所として、古くから恐れられ、忌み嫌われてきました。鬼門には北東の表鬼門と、南西の裏鬼門がありますが、なぜこの2つの方角が鬼門として恐れられたかは、以前の記事「What is鬼門?」北東編・南西編でもお話しました。 古代中国を襲った異民族(匈奴)による侵攻・殺戮の史実から北東が、また台風や季節風などの自然の猛威から南西が、ともに鬼門として恐れられたことが、やがて日本に伝わりました。そして日本列島の形状が、まさに北東から南西へ延びる形であったことから、戦などの争いごとや流行り病といった“災い”が、実際に北東や南西からやってくるものとして、鬼門思想がより日本に根付いてしまったともいえます。 もっとも、鬼門に関しては種々様々な説があり、この他にも多くのいわれがあります。鬼門は鬼が出入りする方角であるとか、鬼門の方角から出かけると帰ってこられないとか、いずれも、「鬼門は恐ろしい方角」というイメージを抱かせるものばかりです。平安京の鬼門鎮護として、北東にある比叡山に延暦寺が、また江戸城の鬼門鎮護として寛永寺が建てられたと伝えられたように、鬼門を恐れる考え方が代々受け継がれてきたのでしょう。 今日でも、その鬼門を恐れる考え方は根強く残っています。昔に比べ、ありとあらゆる物が進歩し、変化した現代でも、鬼門は災いが起きる方角、鬼が出入りする方角だと信じて疑わない人が多いのです。その証拠に、私のもとへ寄せられる相談にも、ただひたすらに鬼門から水まわりや玄関を外したいというものが多いのです。1979年に、「トイレが鬼門にかかっている設計は瑕疵(かし)である」という判決が、名古屋地裁でありました。もっともこれは、施主が鬼門からトイレを外してほしいといった希望に対して、業者側が了解したにもかかわらず、その約束を守らなかったことが瑕疵であるということですが、裁判にまでなってしまうほど、やはり鬼門は恐れられているのでしょう。しかし本当に、鬼門はそんなに恐ろしい方角なのでしょうか? 家相の本などには、「鬼門に水まわりをつくると病気になる」とか、「鬼門に玄関がある家は不幸になる」など、家をつくろうとする人たちを不安にさせるような内容のものが多いのです。家を建てて病気になったり、不幸になったりしたくはありませんから、誰しも、できれば鬼門の水まわりや玄関は避けたいと思うでしょう。しかし、それができない場合のほうが多いのです。敷地も広く、建物面積にも余裕がある場合は別ですが、現代の住宅事情のもとで、ただむやみに鬼門から水まわりや玄関を外したとしても、その家は住みやすい家、快適な家とはいえないでしょう。 鬼門とはあくまでも、北東・南西という「方角」なのです。もし、本当に病気になったり、不幸になったりするのだとしたら、それは、北東・南西という方角が原因で起こることだと考えるのが正当でしょう。ならば、その方角の欠点を知り、それを補う対策をすればよいのです。北東は、家の中の他の場所より寒く暗い場所ですから、冬に暖かく過ごせる工夫や明るく感じさせる工夫を、南西は暑く物が腐敗しやすい場所ですから、風通しよく、夏を涼しく過ごす工夫をすることです。冷暖房設備や照明器具、内装材やインテリアなど、現代には鬼門対策となる文明の利器がたくさんあるのですから。 ![]() 最後にもうひとつ、鬼門にまつわるお話を。北東の方角は、艮(丑寅うしとら)の方角といわれていました。そこから、ウシの角とトラの模様のフンドシが鬼をイメージさせたとか。昔話の「桃太郎」で、鬼退治のお供をしたのはサル(申)・トリ(酉)・イヌ(戌)ですが、このメンバーは、北東の反対の方角、つまり南西に近い方角をさしています。北東の丑寅を反対側の動物を連れて退治に行ったわけです。 |