廊下のない住まいは作るべからず |
|---|
「この図面はいかがでしょうか。夫婦でいろいろと話し合い、建築家と何度も打ち合わせをした結果、すべてうまく収まった図面です。先生のご意見をお聞きしたいのですが」と机に広げられた図面。このところ実に多く拝見する「廊下のない、リビング内階段」の図面です。![]() ![]() 「どんな点を重視してこの間取りにされたのですか?」とお聞きすると、「子供が帰宅したときに黙って2階に上がらないように、階段をリビングの中につくりました。また、高気密住宅にするので、水回りとリビングとの温度差ができないように、同一の空間にしました」とのこと。まだ間取りの変更が可能なことを確認して、私は「少々辛口のアドバイスになりますが、ずばり申し上げて、私はこのような間取りは凶と考えています。」と続けました。その理由こそ、この施主が重視したというリビング内の階段と、廊下のない空間なのです。 テレビのリフォーム番組や住宅雑誌、インターネットのコラムなどでも、このような住まいが「子供を孤立させない住まい」、「家族の気配がいつも感じられる住まい」などとしてよく紹介されています。 そのためか、若い世代の施主や建築家たちには受けのよい間取りのようで、実際に講演会でこのような図面をプロジェクターで映し、「こういう間取りを考えている方はいらっしゃいますか?」と質問すると、若い方を中心に7割近い方が「計画中である」と挙手されます。続けて、私はこんな質問をします。「みなさんには反抗期はありましたか?」 まず100%といってよいほどの方が、「反抗期はあった」と答えられます。中には、今も反抗期だと会場を沸かす方もみえますが。 ![]() 子供との触れ合いを大切にすること、家族がいつも仲良く暮らすことは、たいへんすばらしいことです。そして、そういう「楽しく暮らせる住まい」をつくりたいと願うのも自然なことではあります。しかし、人生には山も谷もあるように、住まいの中もいつも楽しいことばかりではありません。子供の反抗期もあれば、家庭内のもめごとが起きることもあるでしょう。 ![]() そんな時、「楽しく暮らせるだけの住まい」では、逃げ場がなくなってしまうと私は思うのです。子供だって親に見せたくない姿もあれば、親を見たくないときもある。逆に親も、子供に見られたくない姿もあれば、子供の姿を見たくないときだってあるでしょう。そういう時、このようにオープンな間取りでは、階下に下りることも、トイレやお風呂に行ったりすることもはばかられてしまいます。一人になりたいがために、子供は逆に部屋にこもってしまうかもしれませんし、親も気持ちが安らげず、余計にストレスがたまってしまうかもしれません。 もちろん、私は決して無関心や放任を良しといっているのではありません。「親」という字は、「立つ木の陰から見る」と書きますよね。子供をよく見ることは大切ですが、見過ぎてしまうのも考えものです。いつもお話していますが、家相の基本でもある易学では、「中庸」を旨としています。無関心や放任はいけませんが、過保護や過干渉もよくありません。陰からそっと見ていてやれるような、適度な間合いが親子にも必要だと思うのです。以前の記事、「階段は子供の心を表す打楽器だ」でもお話ししていますが、子供の心の中を見たいのなら、階段の上り下りの音や、ドアの開け閉めの音でも知ることができます。四六時中目に入る場所ではなく、私はむしろそういう音が感じられる場所に、階段をつくることをおすすめしたいのです。 ![]() 間合いは住まいそのものにも必要です。「間(部屋)合い」、つまり、それが廊下なのです。 ![]() CGをご覧ください。このように廊下のない住まいでは、食事中にトイレに行きたくなっても、躊躇して我慢してしまうでしょうね。ドアを開ければ臭気も漂うし、使用中の音が聞こえるのも気分のよいものではありませんからね。来客時であればなおさらでしょう。 また、風通しを考えて洗面室の戸を開けておけば、浴室の湿気や臭気、洗濯機の音などもリビングに流れてきます。衣類の埃や陰毛なども、風に乗ってダイニングに移動してきますし、キッチンでの調理や、ダイニングで焼き肉をした時などにも、においや油煙が階段から勢いよく2階に上っていくことでしょう。将来的に親と同居し、和室を老人室として使うことになっても、このようにひと続きの空間では、家族みんなが気を使って暮らさねばなりません。 リビングが何十畳もあるような外国の住まいならよいですが、日本のように限られた広さの住まいだからこそ、「緩衝役」である廊下が必要なのです。 ![]() 確かに、高気密のメリットを考えて、このような間取りを計画することも多いのですが、高気密の建物は冷房、暖房には有利ですが、音や臭いがこもりやすい一面もあることを理解してほしいのです。私の東京用の住まいも高気密の建物ですが、においの強い料理をすると、2日ぐらいは抜けないことも、料理好きの身をもって体験しています。「24時間熱交換型計画換気扇」などではとても役不足。大きく窓を開け放して、しっかりと換気の時間を持つことが、現代の高気密の建物こそ必要になるのです。 しかし、マンションなどの場合はこのような廊下の無い間取りも多いはず。また一戸建てで、すでに階段などをリビングに作り冬季に2階から冷気がおりて後悔なされている方、また子育ての面で今回お話した内容に共感される方もいらっしゃると思います。 ![]() そのような場合の対策例をお話しましょう。下記のCGのように奥行きが浅く天井まで確保できる棚が通信販売でも数多く売られています。天井に突っ張り機能もあり地震時の転倒の心配もありませんから、このような超薄型の棚などを利用されてみるとよいでしょう。 ![]() パーティーションや古風な衝立なども、面白いアイデアだと思います。視線を適度にさえぎり、気の流れ(空気の流れ、暖気、冷気)も変わってくるはずです。 子供の姿がよく見える、何でもひとつながりの気密性の高い空間が、家族みんなが気疲れし、音も臭いもこもりがちの空間にもなりかねないのです。住まいには「廊下」も重要であること、おわかりいただけたでしょうか。何度も住まいを建て、無事子育てを終えた今経験からこうアドバイスしています。 この方もまた、私のオフィスの長い廊下を歩いて帰られました。 |
このサイトをご利用いただく際の、著作権に関するお願いがございます。
(C)copyright
2005 家相研究家 小池康壽
![]()