住まいには「陰」を取り入れろ

「中庸をもって旨とすべし」。家相を研究するために易学を本格的に学んだときに、深く知った言葉でもあり、私が好きな言葉でもあります。何事にも偏らない考え方を旨(良し)とする中国の哲学書の教えです。

私は、現代の住まいはいろいろな面で中庸からはずれ、偏った住まいになっていると感じるときがあります。そのひとつを今回はご紹介いたしましょう。



私の事務所にはカーペットが敷いてあるのですが、鑑定に訪れる方たちから、「家相上はカーペットの方がよいのですか?」と質問されることがよくあります。そんな時、私はいつも「そうですね。カーペットのほうが吉だと思いますよ。」とお答えしています。

誤解があるといけませんから始めに断っておきますが、すべてにおいてフローリングが悪いと言っているのではありません。カーペットに比べて掃除もしやすく、施主にも人気のあるフローリングですが、すべての居室をフローリングにするのは凶だというのが私の考えです。



中国思想には「陰陽説」という考え方があります。物事を陰と陽にわけ、それらが互いに消長、調和して秩序が保たれるという考えです。私は、固くて丈夫、掃除もしやすいフローリングを「陽」と例えています。そして、畳やカーペットは、掃除がしにくく柔らかい材質ですから「陰」としています。住まいも陰と陽をバランスよく利用して、偏らず中庸であってほしいと考えているのです。



私は以前、自宅の床をすべて花梨の無垢板で施工した経験があります。それから数ヶ月後、足に痛みを覚え、外科医の兄に足底筋膜炎と診断されました。固い床材を素足で歩くことで、足に負担がかかっていたのでしょう。そこで思い切って、床の半分近くにカーペットを敷き詰めました。すると、不思議に痛みも消えていったのです。畳やカーペットのようなやわらかい床材、陰の材質も住まいには重要であると、この時に気付かされました。

また、私は現在、盲導犬協会のリタイア犬を預からせていただいています。2匹の大型犬が家の中にいますから、部屋には犬の毛もよく抜け落ちますが、わが家は玄関ホールもリビングもカーペットを敷いています。ペットを家の中で飼う人が多いのですが、犬はフローリングだと滑りやすく、足腰にも負担がかかりやすいため、それも一因となり関節の病気になったりすることが多いといいます。ハードな務めを終えたわが家の犬たちの足腰に、負担がかからないようにするためにもカーペットは有効なのです。



「でも、犬の毛が落ちるのにカーペットは不都合なのでは?」と思われる方も多いでしょうね。フローリングとカーペットでは、清潔度という点ではやはりフローリングが断然有利です。ものをこぼしても拭けばきれいになりますからね。しかし、実際の生活では、人やペットが家の中を動き回りますから、ほこりやカビの胞子、ダニの死骸、犬の毛などはフローリングの方が舞い上がりやすくなります。そして、舞い上がった空気を私たち人間が吸いやすくなるのです。特に身長の小さな子供たちは、より汚れた空気を吸いやすくなるでしょう。



その点でいえば、カーペットはほこりを吸着し、空気中に舞い上がらせない特性がありますから、簡易な空気清浄機ともいえるのではないかと私は考えています。ただし断っておきますが、毎日きちんと掃除をしなければいけませんよ。カーペットに付着したほこりやペットの毛を、ゆっくりと時間をかけて掃除するのです。そうすれば、テーブルや家具などにたまるほこりもずいぶん少なくなるというのが私の経験談です。

もうひとつは音の問題です。マンションにお住まいで、やんちゃ盛りの子供さんがいる家庭では、音を吸収するカーペットは大吉の床材でもあるのです。小さな子供たちに静かに生活しろといっても無理な話。鑑定にみえる方の中にも、マンションを購入したものの、階下の人の苦情でやむを得ず転居するという方も意外に多いのです。二重床にしたとしても、元気な子供たちのジャンプにはかなわないでしょう。わが家のやんちゃな孫と遊ぶと、私もいつもそう思います。



「中庸をもって旨とすべし」。最後にもう一度言っておきますが、私はすべての部屋をカーペットにしろと言っているのではありません。暖かい日差しが入る部屋があれば、日陰で夏に涼しい部屋も必要なように、住まいは「陰」と「陽」のバランスのとれた建物であってほしいと願っているのです。陽の材質のフローリングの床もあり、陰の材質のカーペットや畳のコーナーもありというように、双方をうまく取り入れた住まいであってほしいと思います。

「住まいは中庸であってこそ大吉である」。小池康壽の家相学ではそうお伝えしておきましょう。

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<陰陽説> 陰陽二気が互いに消長し調和して自然界の秩序が保たれているように、政治、道徳、日常生活などの人間の営みは、すべて陰陽の変化に順応することでうまくゆくとする考え。道徳の根元の天と人の一体を説く中国思想で、長くその形而上的根拠となり、また、五行説とも結びついて流行した。  (国語大辞典(新装版)小学館より)


ちゅうよう 【中庸】
考え方・行動などが一つの立場に偏らず中正であること。過不足がなく、極端に走らないこと。また、そのさま。古来、洋の東西を問わず、重要な人間の徳目の一とされた考え

ちゅうよう  【中庸】
中国の哲学書。一巻。孔子の孫の子思の作と伝えられる。元来「礼記」の中の一編であるが、南宋の朱熹(しゆき)が取り出して四書の一つに加え、「中庸章句」という注釈書を作った。天と人間を結ぶ深奥な原理を説いたものとして、特に宋以後重視された。
三省堂提供「大辞林 第二版」より

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