家の中にギロチンがある

相談者の図面を見ると、家の中に「ギロチン」がある場合があるのです。ご存知のようにギロチンとは断頭台のことです。「そんなものが家の中にあるなんて!」と皆さんをびっくりさせてしまったかもしれませんね。実は私が「ギロチン」と呼んでいるのは、押入れやクローゼットなど収納用の「折戸」のことなのです。

私が住宅の営業をしていた頃はまだ、ほとんどの住宅やマンションの収納扉は引違い戸や観音開きの扉で、折戸はめったに使われませんでした。なぜなら折戸は値段が高かったからです。扉とはおもしろいもので、大きくても小さくても値段があまり変わらない、あくまでも「1枚でいくら」のものでした。たとえば、通常の押入れの扉を引戸にすると2枚で済むものが、折戸になると4枚必要になり、極端な話、建具にかかる費用が倍になってしまったのです。

ところが、最近は建築資材が安く購入されるようになり、デザイン性のよい折戸がオプションではなく標準仕様として、住宅の押入れの扉にどんどん使われるようになってきたのです。ですから最近の住宅の設計図を見ると、ギロチン、いえ折戸があちこちに使われており、私は心配になってくるのです。折戸を実際に使っている方はおわかりでしょうが、構造上折戸は、手前に引くと扉が山形に飛び出して開きます。また閉める時は元の方向へ押していくと閉まる構造になっていますが、この時に取っ手を持たずに、山形に飛び出したところを押して指を扉に挟みこんでしまう事故が多いのです。

特に小さい子供の場合、指を骨折してしまったり、時には切断してしまったりする大けがになることもあるのです。家の中のギロチンは、何の罪もない子供たちに刃を向けてしまうのです。昔から「美しいものには刺がある」といわれるように、デザインのよい折戸にも思わぬ危険が潜んでいるのです。家の構造から吉凶を占う家相学の観点からも、折戸が使われていれば上記のようなことが起きる可能性が十分考えられます。

幼少期に指を損傷すれば、当然子供の将来にも影響を与えます。家の構造が原因で子供の人生を変えることは避けなければいけません。設計中のプランならできる限り引違いの扉に変更した方がよいこと、どうしても使用する場合は子供室以外の場所にすること、指づめ防止のためのR加工やソフトクッション加工が施されているものを使用すること、マンションなどで既に取り付けられている場合、幼少期の子供部屋などは扉を一時期外しておくこと。

設計図の中にギロチンを見つけた時、特に小さい子供さんがいる場合には、私はいつもこうアドバイスしています。おそらく皆さんの中には、「またオーバーなことを言って…」と思われる方も多いことでしょう。もし皆さんのお宅に「PL法」施行以後に取り付けられた折戸があれば、ぜひその折戸を見てください。折戸を開いた小口に「指づめに注意!」と必ず書かれているはずです。

これは現実にこのような事故が起きるため、製造者責任を逃れるために住宅メーカーや建築部材メーカーが表示しているものなのです。指づめの事故をおこす子供たちは、この注意書きの文字が読めない小さな子供が多いということを、親も設計者も知るべきだと思います。

扉一つで、子供の人生が変わってしまってはいけませんから。


--------------------------------------------
製造物責任法(PL法)
製造物の欠陥により、人の生命、身体または財産に関わる被害が生じた場合、その製造業者などが損害賠償の責任を負うと定めたもの 施行:1995年7月1日

ギロチン
断頭台。斧(おの)状の刃物を落下させ、下に横たわる受刑者の首を切断する装置。フランス革命のときの議員ギヨタンの提案によったところからいう。
---------------------------------------------


このサイトをご利用いただく際の、著作権に関するお願いがございます。
(C)copyright 2005 家相研究家 小池康壽